クエストフォーラム (QuEST Forum) のご紹介
2018年7月
クエストフォーラム日本ハブ
【はじめに】
クエストフォーラムは1998年に北米の通信プロバイダ及びサプライヤが主導、設立した、通信プロダクト・サービスの品質向上を主眼においた世界的業界団体である。なお、クエストフォーラムは米国通信工業会TIA (Telecommunications Industrial Association) と、双方の持つ会員およびプロダクトを広くICT業界に展開すべく2017年11月に統合された。クエストフォーラムは新たなTIAの中のBPC (Business Performance Community) というひとつの大きな柱として位置付けられ、現在2019年に向けて全体組織を再構築中である。
【ビジョンとミッション】
〔ビジョン〕 :情報通信技術(ICT)利用のお客様に提供する製品及びサービスの品質向上のために,グローバルな推進力となる。
〔ミッション〕:ベストプラクティスを共有し,要求事項, 測定法及び第三者認証プロセスを進化させつつ、グローバルな協調を通じてTL 9000の適用を推進する。
【現在のクエストフォーラム】
- 1998年設立当初のクエストフォーラム会員数は、30団体であったが、その後欧米のカナダ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギーなど及びインド、中国、韓国、日本などアジアからの参加が増え、2018年5月現在の会員数は,サービスプロバイダ22社,供給者94社,リエゾン38社で合計154団体になっている(www.questforum.orgを参照)。
- TL 9000認証取得数は、2018年5月現在1,555サイト。北米通信ビジネス市場では、TL 9000認証取得は主流。又欧州でもその方向にある。
- クエストフォーラムはTL 9000を制定・運用している。
【誕生の背景】
北米においては、1984年のベル系地域電話会社分割やその後のベルコアの身売りなどで、それまでの統一されたATT規格・ベルコア規格から、BOC各社が独自の購入規定を定めることになった。このため、
- サプライヤ側は、納入先毎に調達の要求事項が異なることに苦慮、
- サービスプロバイダ側も、多数の規格が存在し、それらは互いに重複する部分が多いので整理する必要と、IPなど新分野の製品に対する基準も用意する必要があった。
そこで、当時のBOCである、Bell Atlantic, Bell South, Pacific Bell, South Western Bellの4社及び主要サプライヤが、共通的な品質基準の確立を目指し、この趣旨に沿ったクエストフォーラムを設立。電気通信業界のセクタ規格TL 9000を1999年に誕生させた。
【TL9000の特徴】
- ISO 9001をベースに電気通信分野に焦点を合せ、要求事項編と測定法編で構成される。
- 要求事項:追加要求事項92項目。ハード、ソフト、サービス及び共通の区分けがある。
- 測定法:実際の製品サービス納入後のパフォーマンス測定(納期遵守率、障害発生件数、システム停止回数、障害対応スピードなど)を義務付けている。ベンチマーク、トレンドチェックに利用でき、改善の指針とできる。
- 審査登録はISO 9001と同じく認証機関により実施される。 審査の手法、審査員の資格認定、訓練機関などは、ISO規格と同じ形態をとっており、認証機関の適合性認定も日本ではJAB(日本適合性認定協会)が行っている。JAB及び各認証機関もクエストフォーラムのメンバである。
【クエストフォーラムの日本への期待】
- 日本の通信業界の技術レベル、品質レベルが世界最高峰であることは、欧米も認識している。クエストフォーラムは任意の業界団体であるので、相互にギブアンドテークの考えが基本にある。また最先端にある日本はもっと積極的に参加・貢献し、欧米の通信プロバイダと共に牽引する側には入ってほしいと期待されている。
- この点で、規格の改善・改訂への協力、最適事例紹介のみならず、共に通信業界の先進的な品質システム構築していく同志として、運営・提案・実活動への協力期待が非常に大きい。
- 最近はインド、中国のプロバイダ、大手サプライヤがTL 9000認証取得を開始し、かつクエストフォーラムの活動にも積極参加している。
《具体的項目》
- TL 9000の採用と適用推進と普及。
- ボードメンバーとなり、内側からの推進協力。
- 日本からの情報発信の増加。
- APACベストプラクティス会議開催推進とAPACへのリーダシップ。
- クエストフォーラムメンバ拡大と日本業界とのタイアップの強化。
- 新技術・新サービスに適用に対しての課題と対案の提案、など。
【クエストフォーラムへの積極参加のメリット】
- 通信品質向上活動を通じてグローバルレベルで通信業界の発展に寄与・貢献できる。
すべての経済活動がグローバルレベルになった現在では自分だけの土俵ではなく、皆と同じ土俵で活動する必要がある。遅れている点は吸収し、進んでいる点は逆に情報提供により、業界全体の調和発展に寄与できる。これはビジネス上のメリットであり、かつその企業・国の評価も高まる。
- 課題先進国として通信業界の品質向上への貢献を期待されている。
何を悩んでいるか、何が問題かなど日本だけで考えずに欧米通信業界へも投げかけてもらい一緒に通信業界の発展を考えて行きたいと期待されている。先進課題とその取組みを紹介するだけでも、業界の方向性を示せるし、連帯感が強まる。ひいては日本の先進性の証明にもなるし、
- 通信業界の一員としてグローバル化に前向きに取り組む。
現代は政治経済技術などあらゆる面で従来のローカルの集合では無く、一つのグローバルの方向にある。従い好むと好まざるとをかかわらず、このグローバル化の流れの中に入らざるを得ない。その意味でもこのQuEST Forumは時宜を得ている。ガラパゴス化現象等の心配もなくなる。
- 通信業界の品質向上の為のTL9000規格策定に参加・貢献できる。
TL9000は制定後、10年になり、米国はもちろん、欧州、アジアでの採用が広まっている、通信業界品質システムに焦点を定めた唯一の国際規格である。規格の段階から参加、協力することで、通信業界への貢献ができるとともに、新規格の最新動向を把握できる。
サービスプロバイダ、サプライヤ、認証・認定・訓練機関などが対等な条件で参加する世界でもユニークなフォーラムであり、普段は難しい同業他社・サプライヤとの意見交換が行いやすい。世界の主要なサービスプロバイダはほとんど入会しているので、サービスプロバイダとして横の連携をつくりやすい。グローバルレベルで業界の考え方、困っている点等を知る機会ができる、またプロバイダ同士で品質に限らず運用・保守・規制などの課題の情報交換が容易に行える。
- サービスプロバイダにとってのTL9000認証登録(サービス)の近道となる。
近年サービスプロバイダ自身も、プロセス改善・向上によりエンドユーザの顧客満足度を向上させようという動きが進んでいる。このため、TL 9000取得の動きが米国、欧州、APACで出てきている。また、通信サービスを測定するために、どういう項目を追加測定すればよいかなどの検討も始められている。
- ベストプラクティス会議に参加し、発表及び情報収集の機会が得られる。
TL 9000活用事例のみならず、6 シグマ、BSC(バランススコアカード)、MB賞、ISO 9000、e-auditなどの導入例、組み合わせ例、組み合わせの相性ひいては従業員モチベーションのための心理学など非常に幅広い実施例が紹介される。
他業種(Boeing等)での調達購買手法、マルチサイトでの運用法などの紹介も入手できる。
【TIAのコミュニティ:4つの柱】 Business Performance Communityが現在のクエストフォーラム
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